DJ MIX SHOW

Adriana Evans & Dred Scott Interview

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Adriana Evans & Dred Scott スペシャル・インタビュー

'94年のデビュー作となったDred Scott Feat. Adriana Evans "Check The Vibe"、 そして'97年には1st アルバム『Adriana Evans』を完成させ、Erykah BaduやJill Scott、 Amel Larrieuxといった後発のアーティスト達よりも一足先にネオソウルの完成形を呈示。 ジャズやソウルの持つ永遠不滅のサウンドをヒップホップ的解釈で料理したサウンドに Adrianaの透明感溢れるピュアな歌声は今でも多くのファンを魅了してやまない。

そして7年の歳月の後2004年に発表された『Nomadic』では、ボッサやロック、サンバまでも取り入れ彼女達の更に広がった世界観を表現し、見事シーンにカムバック。先日3年振りのリリースとなった最新作『El Camino』はボッサやブルースのテイストを取り入れながら1stアルバムの延長といえるソウルを軸に半端ない完成度振りを見せ早くも今期のベストアルバムと称されている。どこか懐かしさを感じさせるDred Scottのサウンドプロダクション、そしてAdrianaの歌声が奏でる至福のメロディーが作り出す彼らの音楽はどれもポジティヴなヴァイブスに包まれ聴く者を豊かな気持ちにしてくれる。現シーンではまさに唯一無二といえる貴重な存在の2人。

今回は急遽プロモーションのため来日した二人に、我がマンハッタン・レコードが独占インタビューを敢行。公私ともに最良のパートナーである2人の、プライベートな事から今までのキャリア、音楽シーンの今後、更には曲作りの奥深いところまでをたっぷり聞くことが出来ました。

Manhattan Records (以下M) :『El Camino』のリリースおめでとうございます。 とても素晴らしい仕上がりになっていますが、ご自身の心境はいかがですか?

Adriana Evans (以下A) :サンキュー!私たちも『El Camino』をとても気に入っているの。自分たちが聴きたいと思う作品を作りたいと思っているから、今回は本当に満足しているわ。

M『El Camino』はどんなコンセプトで作ったアルバムなの?

A :『El Camino』はスペイン語で「路」という意味なの。人生とか音楽とかあらゆる意味を差す広い意味での「路」。自分達のたどってきた過去の「路」、そして現在、未来、全てを素直に見つめ、表現したアルバムね。

M前の作品の話になりますが、1st『Adriana Evans』の後、7年ぐらい音沙汰が無かったですね。その間はどうしていたの?1stのレーベル「Loud」とはどうなったのですか?

Dred Scott (以下D) :「Loud」とは2ndの話もあったんだけど、作品の方向性の違いで辞めたんだ。彼らはその当時、流行っていたメインストリームの方向にAdrianaを持っていこうとして、人気のあった様々なプロデューサーやラッパーを起用して計画していたからね。それに俺達は他の誰もまだやっていなかったネオソウルをやっていたんだけど、レーベルはあまり俺達をプロモートしてくれなかったんだ。きっと当時のアメリカでは受け入れられないと思っていたんだろうね。でも"Reality"のシングルが日本で凄いブレイクしてるっていう話は聞いていたよ。もっと裏話を言うと、もともと1stは「Capitol」から出るはずだったんだ。「Capitol」と契約して制作費を出してもらってアルバムを作ったんだけど、マスターを収めた後になって「Capitol」が突然ブラックミュージック部門を閉鎖してしまって、俺達は発売を待たずにレーベルをクビになってしまったんだ。マスターは返してもらったけどね。それを聞きつけた「Loud」のボスが、ウチから出さないかって誘ってくれたんだ。アメリカの音楽業界ではこういう事が日常的に起こっていて、まるでゲームでもしてるかのようだったよ。

A :1stの後は暫く旅をしてたわ。メキシコやブラジル、キューバ。キューバには私のお父さんが住んでいるから今でもよく行くのよ。中でも特にブラジルには8ヶ月ぐらい住んでいたわ。ブラジルはとにかく音楽に溢れている国で凄くインスパイアされたわ。貧しい国だけどその中でみんな音楽を何よりも楽しみに生活しているから、音楽への愛情やパワーが凄いのよ。

Mその後2004年にリリースされた『Nomadic』にはそういった影響が大きく反映されたわけですね。

A :その通りよ。『Nomadic』は私にとって自由の象徴のような作品ね。タイトルも「放浪」っていう意味なんだけど、それまでのレコード会社とのしがらみとかを全て断ち切って好きなように作ったアルバムなの。そしてソウルフルなロックやソウル、ボッサ、サンバ、ブルース・・・、あらゆるアフリカン・ミュージックのルーツをエッセンスとして取り入れたわ。

M新作『El Camino』はどういうきっかけで作る事になったんですか?

D :特にアルバムを作るつもりで今回の楽曲を制作したわけではないんだけど、俺達は常に曲を作っているんだ。それが日常みたいなもんさ。例えば彼女が料理をしている時に俺がキーボードを弾いていて、何気に弾いたフレーズが彼女の気にとまったら、もう食事そっちのけで制作開始さ(笑) だから今回レキシントンに声をかけてもらった時には、もうアルバムを出すのに十分な数の曲はあったんだ。タイミングが合ったのさ。

Mそれでは制作過程について聞きたいのですが、二人で常に楽曲を制作していると言っていましたが、あなた達の作品を聴いていると、単にDredがトラックを作ってAdrianaが歌、メロディーを乗せるだけでは作りえない、非常に奥行きのある仕上がりになっていると思うのですが、そのあたりを聞かせて下さい。

D :モチロンさ。2人で何度も何度も色んなアレンジをして時間をかけて作ってるんだ。だからひとつの楽曲でも、いくつもの違うヴァージョンがあるんだよ。しかも最後はバンドのメンバーとレコーディングするから、さらにその段階でも変わる事があるんだ。

A :私たち2人の間でも意見が分かれる時があって、その時には2人で何度も聴き直すの。最初から最終段階までの間にどんどん曲が成長していくのよ。まるで自分達の子供が育って成長していくかのようにね。

M曲作りにおいて最も重要だと思うポイントは何ですか?

D :キーボードとギター。コードが一番大事さ。コードがあってメロディーが生まれていくんだ。コードは例えば建物を作る時の土台みたいなものなんだ。土台のしっかりしていない建物に色々装飾だけ豪華に施していってもダメだろ。最近のアーティストはコードをまったく気にしていない人が多いと思うんだ。そのくせバックコーラスとかにだけこだわる人がね。それじゃあ本当に良い作品は作れないよ。

A :同意見、私もヴォーカルとメロディーね。ブラジルではほとんどのストリート・ミュージシャン達がギターと歌だけで演奏しているのよ。歌とギター、またはピアノがあれば、良い曲は出来るのよ。

Mちなみに制作とは別で好きな楽器の音色は何ですか?

A :私はやっぱりギターね。

D :俺はフルートかな。学生の時にフルートを習っていたからね。

Mそんなあなた達の作品で特に印象的な、あの素晴らしいメロディーラインはどんなインスピレーションによって作られているの?

D :Adrianaはとにかくとんでもないメロディーを突然作り出すんだ。これはもう天性の才能としかいいようがないよ。それこそ神様から授かったようなね。

A :いつも突然浮かんでくるの。というよりは何処かから送られてくるのよ(笑) 家にいるとき、車に乗っている時、外に1人でいる時にでもよ。だからいつもレコーダーを持ち歩いているの。レコーダーを持ってない時には、もうそれこそ家に電話して留守電に吹き込んだりね(笑) そうするとすぐにDredがコードを作ってそのメロディーを完成させるのよ。

MAdrianaのライヴを観ると、レコードとはまた違ったパワフルなヴォーカルを聴く事ができますが、Adrianaは聖歌隊でゴスペルを歌った経験はあるの?

A :ゴスペルの経験はないわ。でも私のリスペクトするシンガー、例えばChaka KhanとかNatalie Coleはゴスペルを歌っていた人だから、そういう人たちからの影響は少なからずあると思うわ。歌う事については私の母から教わった事がとても大きいの。私の母Mary Stallingsは、それこそCount BasieやDizzy Gilespieといった偉大なミュージシャン達と仕事をしてきた人なのよ。母からはとにかく幼い頃から歌う事について徹底的に仕込まれたわ。特に『自分の声、スタイルで歌いなさい』ってよく言われてたのよ。レコーディングの時とライヴの時の歌い方の違いも母から教わった事なの。

M物心がついた頃、一番最初に好きになった曲はなんですか?

D :俺はRun DMCの"Sucker MC"さ。クラブで聴いたんだけどインパクトあったぜ。それまであったオールドスクールは、いわばDisco Rapだろ。ループだけのビートに乗せてラップしている曲を初めて知ったのはこの曲だったんだ。すぐに俺でも作れるって思って、それがラッパーになるきっかけだったんだ。それにこれでお金を稼げるって知って、俺の家族とかからも『ラップしてもっと金稼げ』って煽られたりしてね(笑)。

A :私はMinnie Reperton "Inside My Love"ね。この曲にはありえない様々な魅力が詰まっているのよ。彼女のヴォーカルも、ヒッピーカルチャーに影響を受けた私自身と重なるものがあるしね。とにかくこの地球上で生まれたんじゃなくて、どこか遠い宇宙からやってきたような不思議な魅力がこの曲にはあるのよ。

Mラッパーからスタートして、自らプロデュースもするようになったDredは、どういう過程で今のようなサウンド・スタイルを築いたの?

D :当時の西海岸にはレコードをディグする(掘る=探す)っていうカルチャーがなくて、すぐにサンプリングするネタに困ったんだ。東海岸では沢山のDJがレコード・コレクションを持っていてネタが豊富だったけど、その頃の西海岸はCameoとかMidnight Starとかジェリーカール全盛だったからね(笑) 当時、東海岸のアーティスト達がサンプリングしているネタを聴いて、それなら自分で弾こうって思ったのがきっかけさ。それに当時、Patrice Rushenの"Remind Me"のキーボードを聴いてすごくショックを受けたんだ。コードが曲を作るって悟った瞬間さ。ピアノを弾いてた従弟にすぐこのコードを教えてくれって頼んで、それからは独学で全部楽器を勉強したよ。キーボードやギターをね。だから今でも楽譜は書けないんだ。全て耳と体で覚えるようにしてるよ。

MそれではDredが一番リスペクトしているHip Hopプロデューサーは誰ですか?

D :Pete Rock、Prince Paul、それにDJ Premierさ。

Mそれでは好きなHip Hopアルバムを5枚挙げて下さい。

D :う~ん、今思いつくところでは、Pete Rock & C.L. Smooth 『Mecca And The Soul Brother』、Mos Def & Talib Kweliの『Black Star』、De La Soul 『3 Feet High and Rising』、そしてBoogie Down Productions 『Criminal Minded』・・・、それとWu-Tang Clan 『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』だ!!でもまだまだ好きな作品はたくさんあるよ。

M最近よく聴いているアーティストは誰ですか?

A :Sarah Vaughan、Dina Washington、Gladys Knight、Billie Holiday、Natalie Cole、それにChaka Khanね。最近の人ではブラジルのジャヴァン(Djavan)というアーティストをよく聴いているわ。残念だけど今のアメリカのアーティストでは、ほとんど聴きたいと思う人がいないのよ。

D :Curtis Mayfield、William DeVaughn、James Brown、それにShuggie Otisさ。Shuggie Otisはイマイチ話題にならないけど凄いシンガーだぜ。もっとみんな聴いた方がいいよ。

MJazzやボッサを好んで聴いているAdriana、Hip Hopをルーツに、今ではSoulを聴いているDred Scott。お二人それぞれの音楽的趣向に違いがあると思うのですが、いったいどうやって一つの作品を作りあげているのですか?

D :それはもうお互いをリスペクトして、プロとしての制作作業に取り組む事以外にないんじゃないかな。俺達プライベートでは普通のカップルみたいに喧嘩したりふざけたりしてるけど、音楽作業の時にはきっちり切り分けて接しているんだ。Adrianaはとにかく才能のあるアーティストだし、シンガーとしてもありとあらゆるレンジを持っているんだ。俺の仕事はそんな彼女の無限大の魅力を最大に引き出すことなんだ。例えばLeon WareがMarvin Gayeと作り出した『I Want You』っていう名作。Leon Ware自身の作品ともまったく違うし、Marivin Gayeの他のどの作品とも違う仕上がりになっているだろ。2人の魅力がぶつかり溶け合ってあの名盤が誕生したんだよ。

M話は変わりますが、今のアメリカの音楽シーンをどう思いますか?

A :残念なことに全てが大企業に支配されてしまって個性が活かせるような状況じゃないわね。彼らにとってはシンガーの声の魅力なんてどうでもいいのよ。全て同じ方向に持っていって、宣伝に莫大なお金をかけて人々をコントロールしているのよ。だから本当に良い作品が生まれにくい状況にあるの。レコード会社の重要なポストにいる人たちは、音楽を聴いていないわ。彼らは電卓をたたくだけで仕事をしているのよ。ラジオでも同じような曲しか掛からないしね。そして多くのアメリカ人はそういった状況に流されやすいのよ。だから私は日本がとても好きなの。みんな自分の耳で音楽を探求して、面白いものに耳を傾けようとしているでしょ。今のアメリカはそうじゃないわ。

D :全てがファースト・フードみたいに作られて消費され、古き良きアメリカの音楽はもう死んでしまっているね。それに違法ダウンロードも深刻な問題だしね。アーティストが生活出来なくて辞めていかざるを得ない状況なんだ。

Mこういった状況が将来変わる見込みあると思いますか?アナタ達にとって"Hope"(=願い)は何ですか?

A :これからの若い世代のアーティスト達が、こういった状況を変えるようなムーヴメントをきっと起こしてくれると私達は信じてるの。Hip Hopが小さなムーヴメントから成長した時のようにね。私の若い従弟も20歳で既にメジャー・レコード会社のやり方を悟って、彼らに頼らず自分達で売ろうとしているわ。こういった若いアーティスト達が、メジャー・レコード会社が入り込めないような新しいムーヴメントを起こしてくれるわ。それこそが私達の"Hope"ね。

Mそれではそんな状況の中で、自分達のすべき事は何だと思いますか?

A :自分達の信じる音楽を作るだけね。2ndを作っている時にも考えたんだけど、今はメジャーのレコード会社では自分達の音楽を世の中に伝える事はとても難しいって悟ったの。そして小さいレコード会社からでも自分達の音楽に共感してくれるリスナーがいれば、メッセージは自然と届くべき人達に届くと思ったのよ。

M最後に日本のリスナーにメッセージをお願いします。

A & D :日本の音楽ファンの皆さんの、音楽に対する姿勢は本当に素晴らしいわ。今のアメリカが忘れてしまっているものを持っているわ。どうか変わらずに、音楽を本当の意味で愛し続けて下さい。私達アーティストは、みんなの愛とサポートを受けて存在し続けていく事が出来るのよ。アリガトウ。

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(Interview & Text :Take Shimizu & Nobuo Fujimura)

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